「努力とかマジでだるい」 「好きなことだけやって生きていきたい」 そして、「絶対に失敗したくない」——。
教室で子どもたちと向き合っていると、こういう声を本当によく耳にします。
アニメやラノベで大人気の「なろう系」。何の苦労もせず、ある日突然最強のチート能力を手に入れて無双するあのアニメに、子どもたちは夢中です。
大人の感覚からすると、「楽ばっかりしようとして」「最近の子は根性がない」と愚痴りたくなるかもしれません。でも、彼らの生活の裏側にちょっとだけ足を踏み入れてみると、そこには「僕たちの少年時代とはまったく違う、一度の失敗も許されない息苦しい現実」が見えてきます。
彼らが「なろう系」を求める理由と、この時代に僕たち大人が渡してあげるべき「本当の強さ」について書いてみます。
そもそもの話:「なろう系」ってなに?
「なろう系」というのは、Web小説サイト『小説家になろう』から広がった作品のノリやテンプレートのことです。
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異世界転生: 現実で冴えない主人公が、ある日突然、異世界へ行く。
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最初から最強(チート): 努力のプロセスゼロで、誰も敵わないレベルの魔法やスキルを持っている。
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苦労しない・挫折しない: 泥臭い修行期間なんて描かれない。ポンポン大成功して「すげー!」と持ち上げられる。
「苦労せずにチート能力で成功したい」。 冷めた目で見れば甘えに見えるかもしれませんが、これってぶっちゃけ、時代を問わず人間なら誰しもが心の底で思っている「ズルしたい本音」ですよね。
問題は、「なぜ今の小中高生は、ここまでその願望にすがりつくのか」ということです。
なぜ、子どもたちはここまで「失敗」を極端に嫌うのか?
子どもたちが「努力なしの成功」に強く惹かれるのは、彼らが生きている現実世界が「たった一歩の踏み外しで詰む、ハードモードな世界」になっているからです。
もともと人間には、「得をすること」よりも「損(失敗)をしないこと」を異常に優先する防衛本能があります。失敗を恐れること自体は、今に始まったことではありません。
ですが、SNSの登場で、その「失敗の代償」が跳ね上がってしまいました。
24時間、逃げ場がない
僕たちが子どもだった頃は、学校でちょっとドジを踏んでも、家に帰ってテレビでも観ていればリセットできました。「学校」と「家」の間にちゃんと壁があったんです。
いまの子どもたちには、その壁がありません。 スマホを開けば、24時間365日、クラスのグループラインやSNSで全員と繋がりっぱなしです。
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ちょっと返信が遅れたら「既読スルー」と責められる
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グループの「空気」を読み間違えたら、裏グループで何を言われるかわからない
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一度「イタいヤツ」「空気が読めないヤツ」のレッテルを貼られたら、即ハブられる
夜中になってもスマホを手放せず、返信におびえ、眠れなくなって朝起きられなくなる。そんな子が本当に増えています。
彼らは、「一度の失敗で、自分の人間関係すべてが壊れるかもしれないリアリティ」の中で必死に生きています。 だからこそ、失敗するリスクがある「新しい挑戦」なんて絶対にしたくないし、絶対に失敗しない「なろう系」の世界に逃げ込んで、束の間の安心感を得ているわけです。
でも、これって逆に「最大のチャンス」じゃないか?
ここまでの話を聞くと、「今の子は可哀想だな」「時代が悪いな」で終わりそうになります。
でも、ちょっと視点を変えてみてください。
みんなが失敗を怖がり、誰ひとりとして安全地帯から出ようとしない時代。これって、実は恐ろしいほどのチャンスだと思いませんか?
昔から「出る杭は打たれる」と言われます。周りと違うことをすれば、確かに目立つし叩かれます。 でも、「出過ぎた杭」になってしまえば、誰も打てなくなるんです。
みんながリスクを恐れて足踏みし、ビクビク顔色を伺っている今だからこそ、ほんの少し腹をくくって一歩前に出るだけで、その他大勢から一瞬で抜け出せます。
誰でも使える最強のチートスキル、その名は「勇気」
「自分には特別な才能なんてないし」 「なろう系の主人公みたいに、最初からチート能力があればな…」
子どもたちはそう諦めがちです。でも、現実世界に存在する最高のチートスキルって、IQでも、才能でも、裕福な家柄でもありません。
そのスキルの名前は、「勇気」です。
現実世界での選択肢なんて、いつだってシンプルです。 「やるのか、やらないのか」の2択しかありません。
才能なんていりません。ただ、その2択を突きつけられたときに、失敗するリスクを抱えたまま「とりあえずやる」を選ぶこと。 これこそが、今の時代において最も希少で、圧倒的な差を生む「本当のチート能力」なんです。
最後に
子どもたちが「なろう系」に憧れて失敗を怖がるのは、彼らが弱いからではありません。失敗したときのダメージが大きすぎるSNS時代を、彼らなりに必死に生き抜こうとしている結果です。
だからこそ、僕たち大人がかけるべき言葉は、「根性出せ」でも「現実は甘くない」でもありません。
「失敗したって、死にはしない」 「転んだら、また一緒に起き上がればいいから、一歩だけやってごらん」
そうやって背中を押し、もし失敗して傷ついたときにはちゃんと受け止めてあげる「安全基地」でいてあげること。
失敗を恐れる時代だからこそ、「やる」を選んだ子は、誰も追いつけないくらい遠くまで行けます。子どもたちが自分の足を信じて一歩を踏み出せるよう、応援していきたいものです。

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